声。
人の記憶はどこまで覚えていられるのだろうか。
どんなに忘れたくない存在も、
やがて記憶は曖昧になり薄れゆく。
あなたの温もりも、あなたの声も、
あなたの眼差しも。
薄れゆくのが怖くて。
怖くて。必死になって想った。
でも。残酷だよね。
人は忘れる生き物らしい。
必死になってかき集めても、
必死になって想い続けても、
少しずつ時間と共にゆっくり記憶はこぼれ落ちるんだ。
こんなにも好きなのに。
人の記憶は声から忘れてしまうらしい。
久しぶりにあなたの声を聞いた時。
懐かしく感じなかった。
忘れてしまったのか。私は。
そう思って悲しくなった。
久々に聞いたあなたの声は、
優しいけれど見えない分厚い壁があって、
人を試しているような、信じていないような。優しいのに軽い。優しいのに鋭い。
周りに優しいけれど、当たり障りのない言葉を並べるあなたを見た。
無機質。そう。無機質だった。
言葉と心がちぐはぐであるような。
私はあなたに想いを告げるも。
あなたは私を信じていない。
そう感じた。
昔よりももっと人から自分の心を守っているように思えた。
人に期待をしていないと感じた。
あなたと出会った時のことを思い出した。
あなたはひどく傷つき。
人を信用していなかった。
でも優しいから信じたいと思っていたんだと思う。まだ周りの人に少しだけ信じていいかと期待していたように感じた。
出会った頃のあなたは、私との間にも壁があり。悲しいほどに優しくて、色々な残酷な現実に自分をすり減らしていた。
私はあなたに信じて欲しいと言った。
私を信じて欲しいと。
あなたに信じてもらうためなら何でもした。
何故だろう。信じて欲しかったんだ。
私に似ていたからかな。
いや、ただただお話していくうちに単純にあなたという存在に惹かれたんだと思う。
そこから私たちは恋をした。
あなたの声が少し弾むようになり。
愛おしい。そう思った。
こんな私のことをあなたは信じてくれたのだろう。
本当のあなたは私に向かってとても甘く優しい声で笑うんだ。
私を愛おしく好いてくれている声だ。
安心にも似た心からの声。
私の大好きな声。
無機質じゃない人間らしいあなたを見た。
それが私はとても愛しくて、嬉しくて、幸せだった。
最近、またあなたの声や言葉が、
その時に戻ったかのように思う。
そして、思った。
懐かしい声だ。私の知っているあなたの声だと。大好きな声だと。
忘れてなどいなかった。
愛おしい時間が再び私を幸せにする。
昔、あなたは私にこう言った。
「君といる時は、人間らしい自分でいられる。」と。
最近、私があなたにこう言う。
「今、ひーくん、なんか人間らしいね。」と。
そう言った私に笑うあなたが、
とても愛おしい。
私はあなたを愛しています。
ずっとずっと愛しています。
これからも永遠に。