我慢。

あの頃、私はあまり泣かなかった。

泣かなかったんじゃなくて、ひーくんの前で泣かなかった。

今日、ひーくんに「我慢してたんだね。」と言われた。

あの頃の私は、いつも強がっていた。

別れの時も、最後のさよならの時も。

私は、泣かなかった。

代わりにあなたがいつも泣いてくれていた。

胸がぎゅって締め付けられる。

今でも、あの時のことを鮮明に覚えてる。

あれは、お別れしてから数年経った日だったと思う。

 

「もしも。私が…。私が一緒に生きてと言ったら、あなたはどうする?」

 

ずるいことを聞いた。

強がりの私の精一杯だった。

 

「……君は…でもまた居なくなるでしょう?」

 

その問いかけに、すぐに否定できなかったのは、当時の環境や、失うことからの恐怖からだけじゃない。

私より、幸せな場所があるって思ったから。

私は何故か納得してしまったんだ。

そして、あなたから離れた私の自業自得だった。

 

「……あぁ、そうだよね。」

だから私は、そう言った。

 

「ごめんね。もうこれで最後。

もう、あなたの前には現れない。」

 

頑張って絞り出した言葉。

精一杯の強がり。

 

だって、納得してしまったんだ。

ここで、私にくるような人だったら、私はあなたを好きになんてなってなかった。あなたのその誠実さ、真面目さも私は好きだったから。

 

「………わかった。」

 

私の代わりに、あなたがまた泣いてくれていた。

私のために泣いてくれるんだな。

どこまでも優しい人。

あぁ、好きだな。すごく好きだよ。

大好きだよ。

でも。

さよなら。

 

「今までありがとう。」

 

好きだとは伝えられず、あの頃、私の恋は終わった。

いや、長い恋の始まりと言った方が、あっているのかもしれないけれど。

 

今は、ひーくんの前で泣き虫な私がいる。

今まで我慢していたんだろう。

そう今日言われて、改めて気づいた。

一緒に頑張っていきたい。

一緒に生きていきたい。

あなたを幸せにしたい。

ずっと我慢していた想いが溢れる。

もう、我慢しなくていいんだよね。

ずっとあなたのそばに居てもいいんだ。

私の想いは、変わらないけれど、

もしも、ひーくんに私の想いが一途に真っ直ぐ伝わっているとしたら、

あの頃よりも、素直になれている私が、ひーくんの前で幸せに笑える私が、いるからだと思う。

だから、胸がぎゅってなるから、想いが溢れるから、すぐに泣いてしまうんだよ。

 

あと少しで、十数年ぶりに、ひーくんに会える。

ずっと胸に秘めて、押しころしていた想いを、伝えられる日が来る。

 

               なー。